1/4との遭遇

朝日(2007.08.13 福島町

 午前5時少し前、漁船のエンジン音で目覚めた。東の空は少し赤味が差していた。早速カメラをセットして朝日を狙う。数隻の漁船が行き交っていた。昨夜は暑く、しかも蒸した。車の窓を開け足元に蚊取線香を点けて、缶 ビール2つとカップ酒の力を借りて眠りについたのだった。
 数枚の朝焼けの写真を撮ってから、コールマンで沸かしたコーヒーをすすりながら、しばし陽が昇るのを眺めた。今日はS氏と約束がある。その場所をナビに入力したら、60km以上有った。あらら、こうしてはいられない。そろそろ出掛けなければ。公園の水飲み場で顔を洗い歯を磨いてから、エンジンスタート。

 ところがすぐに異変に気付いた。臭い!思いきりクッサイ!!!今日も既に気温が上がっていたので、クーラーを入れて走り出したのだが、昨夜足元で点けた蚊取り線香の臭いが、ファンの奧にこびりついてしまったようだ。参ったなぁ!クーラーをつけ、窓を開けての走行となったが、こりゃ数日臭いは取れそうもないぞ!

 

クロウメモドキ(2007.08.13 函館市

 函館市内の某パチンコ店の駐車場で待ち合わせていたので、そこから電話を入れた。S氏はすぐに迎えに出てきてくれた。S氏の実家近くの空き地に車を置かせて貰い、S氏の奥様の車で出発。S氏の奥様とお母様が見送ってくれた。
 車が国道を外れ、斜面を登り始め、ポイントが近いことを教えてくれた。間もなくゲートがありその手前に駐車。そこからは徒歩になる。うーん暑い!すぐに汗が滴った。しかし、目指す蝶は姿を見せない。間もなく次のゲートが見えてきた。そのゲートの脇の木を指差し、これが食草だと思うんだけどとS氏。いや待てよ〜。Fieldは以前クロウメモドキの木を確認したことがあったが、こんなに大きな葉っぱじゃなかったぞ。良く見るとその木の奧に、見覚えのある木を発見。こっちだと思うよクロウメモドキは…

 察しの良い読者の皆さんは既にお気付きのことと思う。今回Fieldが目指していた蝶はミヤマカラスシジミであった。Fieldには、北海道土着種で未撮影が4種あった。その内の1種がそれだった。いや厳密に言うと、昨年ミヤマカラスシジミの写 真は既に撮ってはいたが、これがそうですと皆様に公開するには、余りにみすぼらしいほど擦れた個体だったので、自分の中では未撮影種の中にカウントしていたのである。

 

ミヤマカラスシジミ(2007.08.13 函館市

 しばし路上近辺でミヤマカラスシジミの姿を探すが、なかなか現れてくれなかった。ふと、地形の方角など考えてみたら、この斜面 に陽の差す角度が深くなり、朝露が消えるまでにはまだまだ時間がかかりそうな気がした。ならば核心までこちらからアプローチしようかということになった。
 狭い獣道のような斜面を進んだら間もなく周囲をクロウメモドキが囲むような場所に出た。すると、居た居た。間違いなくミヤマカラスシジミだ。しかしいずれも目線より高い位 置でなかなかマトモな写真が撮れずにいた。

 ところで、ここに来る前に、FieldはS氏に尋ねていた。実は、余りの暑さに、Fieldは半ズボンにソックス、そしてハーフブーツなのだが、このスタイルで大丈夫かと確認をしたのである。大丈夫だと思う…との彼の言葉を信じていたのだが、今Fieldの足に刺さっているのは何?この斜面 、あちこちに野イバラが生えているのだ!既に臑もふくらはぎも傷だらけだった。痛いなぁ!もう!

 

スジグロチャバネセセリ(2007.08.13 函館市

 ここまでの車中で、S氏と未撮影種が何か互いに話していたら、S氏はヘリグロチャバネをあげていた。ならば、この地のセセリは要注意だぞと話していたのだが、こいつが現れてくれた。
 S氏とどっちだ?ヘリグロかスジグロか?と言いながら撮影したが、老眼+乱視がひどいFieldには区別 が付かない。判断は後で画像を見てから…ということにしたが、どうやらスジグロのようだった。S氏、残念だったね。

 

ミヤマカラスシジミ(2007.08.13 函館市

 道路脇のオミナエシにゼフっぽい蝶が止まっているのを見つけた。何だこれは?と思いながら、ファインダーを覗いたら、一瞬リンゴシジミかと思うような地色と後翅のオレンジ斑が目に飛び込んできた。しかし、白い波線は紛れもなくミヤマカラスシジミだ。
 S氏に声をかけながら撮影。若干色は褪めていたが傷もなく、尾状突起もしっかりしていて、まあまあ満足できる1枚となった。

 

トラフシジミ(夏型)(2007.08.13 函館市

 このポイントにはヒョウモンチョウがいた。そしてゴマシジミが多産していた。他に何かいないかとうろついていて、トラフを発見した。春型の鮮やかさは無いものの、やはり魅力のある蝶だと思う。
 それにしても、このポイント、どうやら午後からの場所のような気がする。地形と方角の関係で、ことごとく逆光になってしまうのだ。そして目指すミヤマカラスシジミは、殆どが擦れた個体だった。Fieldは先程の1枚で満足していたので、そろそろ移動しようかということになった。

 

キアゲハ(2007.08.13 某スキー場

 S氏は、先程からさかんに携帯をかけているが、どうも相手の電波状況が良くないらしい。その相手とは、S氏の恩師T先生で、どうもアサギマダラが飛来しているらしいのだ。我々もそのポイントを目指すことにした。移動途中ハンドルを握るS氏の携帯が鳴った。ところが白黒ツートンの車輌が、我々の車のすぐ脇を走行している。代わってFieldが携帯に出たが、初めて聞くT先生の声は、想像より若々しかった。
 ポイントに到着した。T先生は頂上らしい。しかし、頂上では飛び回るだけで撮影は難しいとのことで、ヒヨドリバナの咲く下の斜面 で粘った方が良いのではないかと判断した。ところが一向にアサギマダラは現れない。一方頂上では2桁を越える数が目撃されていると情報が入る。

 結局、我々も頂上へ行ってみようということになった。撮影はともかく、アサギマダラが優雅に飛ぶ姿を見たかった。T先生が車で下りてきてくれて、頂上まで送迎して頂いた。実はこの先ゲートが有って、許可車輌しか入れないのである。

 

S氏(2007.08.13 某スキー場

 頂上の眺望は素晴らしかった。S氏は駒ヶ岳が霞んで、すっきりと見えないことが、やや不満の様子。道南の方には駒ヶ岳は、やはり特別 な思い入れのある山なんだろうか?
  この山頂に小さな女の子を連れたご夫婦がいらっしゃった。男性の手にはカメラがあり、やはり蝶の撮影をしているらしい。お話をうかがうと最近になって蝶の撮影を始められたこと、地元で教師をされていることなどが分かった。Fieldですと挨拶すると、どうやらこのHPを時々覗いてくれているらしかった。ところがもう一人“あなたがFieldさんだったのですか”と声がかかった。何とT先生だった。“あ、はい、私がFieldです”…どうやら、S氏の連れ=Fieldという図式を、今納得してくれたようだ(笑)

 目指すアサギマダラがなかなか現れなかったので、Fieldは駒ヶ岳を背景にキアゲハの写 真が撮れないものかと、試行錯誤してみたが、辛うじて目視は出来ても霞んだ山の形を記録するには到らなかった。ところでS氏は何をやってるのだろうと探したら、斜面 を少し下ったところで下を眺めている様子だった。ん、待てよ彼の後ろに浮かんでいるのは、アサギマダラじゃないか?!“後ろだ後ろ!!”大きな声で叫んだが、どうも彼はカメラを向けた様子がなかった。後で聞いたら、丁度レンズを交換中で、何も出来なかったのだと言う。2002.07.28の黒岳を思い出したとS氏は付け加えた。

 まだ時刻は早かったのだが、とりあえずアサギマダラも見ることが出来たので引き揚げることにした。Sさん、早朝から案内してくれてありがとう。そうそうこの後、特大のカツ丼もゴチになりました。重ねてありがとう。それからS氏の奥様、せっかく美味しい物食べに行きましょうって誘ってくれたのに、ゴメンね。次回は一緒に飲もうね。

 

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