切杭の僧正、市にクレームあり!

国蝶オオムラサキとアカボシゴマダラの羽化シーン

 20年ほど前に、埼玉県鶴ヶ島に居る友人の家に立ち寄った。その時に“これ持って行かない?”と手渡されたのがエノキの幼木だった。蝶に興味の有る方なら、何も説明の必要はないが、敢えて説明すれば、エノキは日本の国蝶とされるオオムラサキやゴマダラチョウ、アカホシゴマダラなど希少種の幼虫を飼育するのには欠かせない“食樹”である。
 最初は狭い裏庭に植えて有ったが、隣家がコンクリートの塀を作った時に勝手にひっこぬ かれた。辛うじて残ったエノキを自宅前の街路樹脇に植え何とか枯らさずにあれから20年、お陰様で国蝶オオムラサキ(埼玉 県産)、同オオムラサキ北海道亜種、アカボシゴマダラ(神奈川県産)等を飼育観察することが出来た。

 

エノキの切り株(2014.11.19)

 そのエノキが11/19の朝、根本から切られていた。街路樹が電線などに絡まないように、市からの委託を受けた業者がチェンソーを持って街路樹のメンテナンスをしていた。Fieldが大切にしていたエノキは、彼等の目には雑木としか映らなかったのであろう。作業の責任者を呼び、この切り株を見せながら経緯を話した。“すみません。注意不足でした。どうしたら良いでしょうか。”と返答が帰ってきた。…そう、どうにもしようが無い。苦情を言ってみても、その時の憂さ晴らしでしか無い。
 20年ほど前の事件を思い出した。帯広市の住宅街を流れる小さな川があった。そこには毎年ホタルが発生していた。その住宅街の近所の子供達もそのことを知っていたようで、私が観察に出掛けると、幾人かの子供達の姿を見ることがあった。ある年、そろそろホタルの時期だなぁと覗きに行ったら、川があった場所は舗装道路になっていた。真っ直ぐに市役所へ行き担当者にクレームを言った。“すみません、知らなかったもので…”川は舗装道路の下を流れているらしかった。
 “知らなかった”…確かにそうでしょう。しかし、それは“知ろうともしなかった”結果 なんだと、何故お役所は気付いてくれないのだろう?かくして帯広市は着実に拓け、確実に人間だけに都合の良い都市になってきました。あーどこか田舎で暮らしたいよ〜!

  徒然草 第四十六段
 公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞えしは、極めて腹あしき人なりけり。
 坊の傍に、大きなる榎の木のありければ、人、「榎木僧正」とぞ言ひける。この名然るべからずとて、かの木を伐られにけり。その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひけり。いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡大きなる堀にてありければ、「堀池僧正」とぞ言ひける。

 

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