胡蝶舞う国へ その9

ワカランジャノメ(2007.09.16 台北縣

 日本のジャノメチョウか、それよりやや大型の種を見つけた。もろ逆光で写 真はあまり出来が良くない。やたらと縁に凹凸がある蝶だとの印象だった。前後翅を通 して裏面には白帯があり、比較的容易に同定出来そうな気がしていたが、該当する種を特定できなかった。うーん悔しい!

 

鐵色絨毛弄蝶 テツイロビロウドセセリ(2007.09.16 台北縣

 かなり歩き疲れて、もう帰ろうとした時に、この蝶と出会った。お会いするのは初めてなんですけれど、見た途端に何故かテツイロビロウドセセリの名が浮かんだ。少しばかり錆の入った鉄色してるもんね。いや、分かり易くて良いネーミングだわ!
 侯さんは、もう帰る…という感じで歩き始めていたが、“ちょっと待って下さい”と声をかけて撮影を続けた。こういう地味な蝶に興味があると説明したが、大きな蝶しか眼に入らない(見えない)のだと仰っていた。

 

姫雙尾燕蝶 ヒメフタオツバメ(2007.09.16 台北縣

 テツイロを撮っているときに、別のシジミチョウが目に付いた。えっ!これってキマダラルリツバメじゃないの?!台湾にキマダラルリツバメなんて居たっけ?と思いながら、シャッターを切りまくった。
 キマダラルリツバメと言えば、必ず冠に珍蝶と付くくらいの種で、Fieldもいつか撮影したいものだと、憧れを持っている蝶だ。ところが後で図鑑を見たら、どうやら日本のキマダラルリツバメは台湾には居ないようで、しかも台湾には近似種が数種居ると言うことが分かった。
 この蝶がヒメフタオかどうか、やや自信はない。また図鑑によっては姫斑馬灰蝶等の名で記載されている。台湾における蝶の第一人者は陳維壽先生だと、私は考えているが、近年若い研究者が台頭して種々異論を唱えているらしく、台湾の蝶の世界は若干混乱気味のようだ。しかし、Fieldとしては、白水−陳先生ラインを尊重したいと思うので、これまで記した台湾名は全て陳先生の著作物を基準に記載していることを申し添えておきたい。

 

黒點粉蝶 クロテンシロチョウ (2007.09.16 台北縣

 この日最後に撮影したのがクロテンシロだった。この蝶も図鑑によれば纖粉蝶と記載されているものもある。意味は“小さなシロチョウ”といったところだろうか。おそらく“シロチョウ科”を“粉蝶”と表現するのは、粉=白粉(おしろい)という意味だと思う。台湾の蝶は日本人による研究が先行し、先に和名がつけられ、それに追随して台湾の名前がつけられたようだが、台湾の方々の感性で、オリジナルの名前が付くことは大いに結構かと思う。しかし、混乱を招かぬ ように、なるべく早く統一して頂きたいのだが、それには未だ数十年かかるかも知れない。
 ところでこの写真、クロテンの由来である黒点が辛うじて写ってくれて、撮影直後は嬉しかったのだが、良く見るとそれは後翅の一部が破損していたからだと気付いて、その嬉しさもやや褪せてしまった。でも、まあ良いでしょう(笑)

 

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