胡蝶舞う国へ その8

青鳳蝶 アオスジアゲハ(2007.09.16 台北縣)

 呂さんの胡蝶園は、興味が尽きなかった。一日中、いや何日居ても飽きることは無い気がする。しかし、ここに留まっていては、他のチャンスを失うかも知れないという気がして、お昼直前に移動することにした。
 
前回の訪台で訪れた場所があったが、天候急変で殆ど成果が無かった場所があった。そこは侯さんお奨めの場所のようだったので、そこへ再度ご案内願った。到着するとまずは腹ごしらえ。と言っても道端に座って、侯さんが用意してくれたお稲荷さんを頂く。たまに地元の方が通 りかかるが、そんなことは気にしない。侯さんはデザートに台湾バナナ、龍眼、スポーツドリンク、お茶まで用意してくれていた。この気配り…侯さんが台湾の父さんだと感じる由縁でもある。
 特に台湾バナナは、子供の頃運動会か病気の時にしか食べることが出来なかった、という話を前回訪れたときにしたものだから、それを忘れずに、わざわざ持ってきてくれたのだと思い感謝した。また、龍眼(本当にそういう名称かどうかは分からない、侯さんはDragon eyeだと言っていた)はちょっと見、サルナシのように見える。おそらくレイシ(茘枝=ライチ)の一種だろう白い半透明の果 肉で大きな種が入っていた。初めて食べたが、ほんのり甘くて美味しかった。

 

琉球紫(虫夾)蝶 リュウキュウムラサキ(2007.09.16 台北縣

 お弁当を食べ終わり、早速周囲をうろつく。お弁当を食べたすぐ近くの水たまりにリュウキュウムラサキがが止まっているのに気付いた。かなり綺麗な個体で嬉しかったがどうも様子がおかしい。撮影後指でつまめてしまった。どういう訳かかなり弱っていて、死ぬ 直前という感じだった。
 Fieldは今“弁当”と書いたが、かねがね気になっていた疑問があった。台湾の街角に並ぶ“便當” の看板を見て、とても違和感を感じていた。そこで侯さんに疑問をぶつけてみた。“べんとう”
の“べん”は、辨慶の辨じゃないですか?と…即答はなかったので、しばらく考えた末に、侯さんが口を開いた“日本人の方が正しいかも知れない”と。
 ここでまた、私の他愛のない疑問を、真剣に考えてくれた侯さんに敬意を表したい。言葉というのは、結構いい加減なところがあって、“赤信号、皆で渡れば怖くない”的な要素が強いと思う。根本的な意味を間違えて用いた言葉が、誰の指摘もないまま用いられて、そのままさもそれが正しいと思われた時、それは正しく、本来正しいハズの表現が誤りとされてしまうことも少なくないと感じている。“便當”か“辨當”かどちらが正しいのかは不明だが、どちらかが誤用であることも間違いないと思う。
※「べんとう」は鎌倉時代に中国から入ってきた、「好都合」「便利なこと」を意味する中国南宋時代の俗語「便當」が語源だそうだ。それ以前は、器の中をいくつかに割ることから、日本では「破子・破籠(わりご)」が使われていた。 日本語の弁当の意味は「弁えて(そなえて)用に当てる」 という意味で、理屈好きの日本人が“便”を、音が同じ“辨”に変え、つじつま合わせをしたんじゃないかと想像する。また器の中を仕切で分けると言う意味からも“辨”はしっくりする。ところがその“辨當”が台湾に逆輸入され、文字だけが元の“便當”に戻ったと解釈するのがしっくり来る解釈だと思う。(Fieldの素朴な疑問におそらくは多くの時間を費やして調べ、ご報告頂いた読者の方に心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。)

 

鳳蝶 ナガサキアゲハ(2007.09.16 台北縣

 安康で後翅表面が水色(灰青)のアゲハを見た。それがどんな種なのかとても気になって、何とか撮影したいと思ったが、叶わなかった。ところが、ここで有尾型のナガサキアゲハの雌と、後翅表面 が水色のアゲハの求愛行動を見た。その、気になっていたアゲハはナガサキアゲハの雄の後翅の青い鱗粉が発達した種だということが理解できた。

 

小紋青斑蝶 コモンマダラ(2007.09.16 台北縣

 コモンマダラが地表すれすれに飛んで来た。半逆光で水色が透けて綺麗だった。慌てて撮影したのだが、その直後すぐに着地して吸水を始めた。飛んでいる時には水色の部分が大きく見えたが、静止している時には意外と水色の小窓は小さかった。

 

端紫斑蝶 ツマムラサキマダラ(2007.09.16 台北縣

 やたらツマムラサキマダラが多かったので、あまり撮影には力が入らなかった。しかし、こうして見るとやはり美しい蝶だと思う。この写 真を撮影し終えた後、今度は広角で撮影してみようと、レンズ交換をした。その間にこの蝶は侯さんのネットの中に納まっていた。あらら…(苦笑)

 

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