唐突に神奈川の蝶たち…


 6月1日から、Fieldは所用で横浜に来ていた。2日に開催されるパーティーに出席の為とでも申しておきましょうか…。30年ぶりの横浜だから、3日は久しぶりに街をうろつこうと考えていた。
 6月2日、パーティーは午後1時から。それまで暇だったもので、埼玉の友人、祖谷氏に電話してみたが、繋がらない。仕方なくアテはなかったが横浜駅近辺をうろついてみた。ハンズがあるとの情報が有り探してみたら、あっさりと見つけることが出来た。実はField、渋谷にハンズが出来た頃からのハンズ・ファンなのだ。“何かを造ること…”にとても興味があるもので、ハンズの商品を見ているだけで飽きない。飽きないどころか、様々なマテリアルを見ていると、“あ、これは、あそこに使えないか”“これを使って、こんなものを造ったら面 白いかも…”と頭が活性化される。
 お昼までハンズで遊んで、ホテルに戻ると、ようやく祖谷氏と連絡が取れた。どこにクモツキ採りに行ってるの?とカマをかけたが“いやいや、家の庭で草むしりしてただけだよ”との返答。今、Fieldは横浜だと伝えたら、かなり驚いていたがそろそろ、パーティーの始まる時刻が近づいたので、一度電話を切らせていただいた。

 

ヤマボウシ(2007.06.03 横浜市

 パーティーが終わり、再度電話をして話し込んでいたら、彼は明日、何も予定が無いという。彼と最後に会ったのは、昨年の9月。…ならば、やはり一緒に遊びますか…。と、いとも簡単に30年ぶりの横浜散策の予定はキャンセルされてしまった。彼が自宅を午前6時に出れば、8時までには、Fieldの泊まるホテルに着くでしょうということで、電話を切った。
 翌3日の天気予報は、曇りだった。7時に起き上がって、カーテンを開けたら、思いの外青空が広がっていた。祖谷氏が現れるまで、あと1時間。のんびりと荷物をまとめていたら、何と7時半に携帯が鳴った。ららら?!早すぎない?“今、横浜駅西口”分かった分かった、急いでロビーに下りるから、ちょっと待って!ようやく、荷物をまとめてロビーに下り、外を見たら彼の車があった。
 “いやいやお久しぶり!ところでこれからどうする?”あらら、彼にお任せと思ったのに、“こっち方面 は得意じゃないのよね〜”と、彼。ならばと、Kさんに電話を入れてみた。“今横浜なんだけど、こっち方面 で良さそうなポイント教えて!”唐突な電話にもかかわらず、昨年アカボシの白い春型を撮った場所を教えて貰って、いざ、出発。Kさんありがとねー!
(移動途中の街路樹…ヤマボウシが、満開で綺麗だった)

 

スジグロシロチョウ(2007.06.03 横浜市

 目的地直前で、コンビニに寄り弁当を調達した。ついでにコンビニのお姉さんに、場所の確認をしたが、うん、ここで間違いない!駐車場で腹ごしらえをしてから、カメラをぶら下げ、歩き始めた。ところが、Fieldには不安があった。今回ばかりは、蝶を撮るということは、全くの想定外で、蝶を撮る時に常用しているレンズを1本も持って来てないのである。パーティーの様子を撮るのに広角レンズと、高倍率ズームレンズの2本だけ。どちらのレンズも、接写 に使ったのでは、解像度に不安があったが、この際贅沢は言ってられない。
 ウツギの周りにスジグロシロが飛んでいた。やり過ごそうと思ったが、待てよ!近年エゾスジグロシロチョウが、北海道東部のエゾスジグロシロと北海道南部以南のヤマトスジグロシロに区分されるようになったのを思い出した。一応押さえておくかと、シャッターを切ったが、いずれの種でもなく、エゾもヤマトも付かないスジグロシロのような気がする。
 ところで、なかなかお目当ての、アカボシの発生ポイントが見つけられずにあちこち歩き回った。食草であるエノキの絶対数が少ないように感じた。たまに見つけても、この時期なら産卵された卵が有ってよさそうなものだが、それすら見あたらない。

 

アカボシゴマダラ(2007.06.03 横浜市

 何度も申し訳ないと思いながらも、結局もう一度Kさんに電話して再度詳細なポイントを教わった。エリアは思いの外広く、全部を廻り切る余裕の無かったFieldにとっては、この2度目の電話に救われた。
 あっさりとアカボシゴマダラが現れてくれたのだ。昨年Kさんの撮影した春型のアカボシゴマダラを拝見したのだが、まるでエゾシロチョウのように感じた。実際飛んでいる姿も、飛び方さえエゾシロと似てると感じた。“エゾシロだ”と叫びながら蝶を追うFieldの後ろから“違うって!”と祖谷氏の声が聞こえた。
 その後、ジャノメ・セセリの類に期待したが、蝶の絶対数が少ない。時折キチョウが飛んでいるくらいだった。キチョウも昨今では、沖縄産がキチョウで、本州産はキタキチョウという説があるが、熱心に追いかける気にはなれなかった。

 

アゲハモドキ(2007.06.03 藤沢市

 時刻は未だ午前11時。羽田に戻るにまだまだ早すぎる。そこで、昨年秋にアカボシを撮った場所も覗きますかと話はまとまった。しかし、車の流れが悪く、距離だけで考えたら15分〜20分と思ったが、1時間もかかってしまった。
 あの込み具合だと、せいぜい1〜2時間で引き揚げなければねと、話しながら歩き始めた。間もなく祖谷氏が草むらを指差した。あらら、アゲハモドキじゃないですか。しかし良くジャコウアゲハに擬態してること!北海道の日高でこの蛾を目撃したときには、ジャコウの居ない場所で、何の意味が有るんだろうね?と思ったが、こちらにお住まいのアゲハモドキにとっては大きな意義が有るのでしょう。

 

イチモンジチョウ(2007.06.03 藤沢市

 コミスジが飛んでいた。北海道産は裏面がもっとオレンジ色をしてると思うのだが、こちらのはどうも黒っぽく感じた。次に飛んだ蝶をアサマイチモンジかも?と思いながら追いかけて撮ったこの写 真も、北海道産より白帯が少し狭く感じる。
 所変われば…で、普通種でも結構Fieldの目には興味深く感じて飽きなかった。

 

ウラギンシジミ♂(2007.06.03 藤沢市

 昨年ここに来た時にウラギンシジミを沢山見た。しかし、高い木の梢でキラキラ飛んでいるのを見ただけで、撮影は出来なかった。今回も現れてくれたのだが、地べたで翅を閉じたままの姿しか撮影させてくれない。それでも、去年よりマシかなと思って諦めていたら、生け垣の葉の上で休んでいるウラギンを発見した。
 鮮やかなオレンジ色が見事な♂だった。おそらくこの蝶の表面を撮らせて貰うのは、これが初めてだと思う。シャッターを切りながら思ったのだが、この蝶、地べたで開翅してるのを見たことがないような気がする。ある程度の高さのある場所でなければ、翅を開くことはないのだろうか?

 

ヒメジャノメ(2007.06.03 藤沢市

 Fieldがこのポイントで最も期待していたのは、ジャノメ類だった。特にヒメジャノメ・コジャノメは、あまり良い写 真が撮れていない。先程から林の縁で、雄と雌が絡んで飛んでいるのは気付いていたがなかなか止まってくれず、悔しい思いをしていた。
 ようやく、単独で飛ぶジャノメを見つけて追いかけたら、今度は立ち入りを禁止するロープの向こうへ飛んでしまった。うーん!ゴメン!!ちょっとだけだからと言い訳をしながら、ロープをまたいでしまった。しかし、暗い。しかも逆光!ストロボを弱めに発光させ、何とか撮ることが出来たのは、ヒメジャノメだった。この蝶台湾では撮影したものの、国内初撮影となった。そんなに希少種ということも無いのだけれどね…(汗)

 

テングチョウ(2007.06.03 藤沢市

 最後に撮影させて貰ったのがこの写真。昨年ここへ来た時にはテングの姿は無かったと思う。ところが、今回は結構な数を見ることが出来た。まあエノキがこれだけあるのだから、居ても当然と言えば当然。しかし、こちらも先程のウラギン同様、地べたで翅を閉じたままの姿は何枚も撮らせてくれるのだが、翅の表を見せてくれることはなく、諦めかけていた。
 祖谷氏の“ここに止まったよ”の声で、近寄って撮影していたら、何と翅を開き始めたではないか!しかも大接近しても逃げる様子もない。“大サービスだよこれ!”とはしゃぎながら何枚もシャッターを切らせて貰った。そう言えば、昨年ここを訪れた時に、最後の最後にゴマダラチョウが大サービスをしてくれた事を思い出した。この場所…もしかしてFieldと相性が良いのかも…

 今日は思いもかけず、神奈川県で蝶とたっぷり遊ぶことが出来た。唐突な電話にもかかわらず、早朝から車を出してくれた祖谷氏、情報を提供してくれたKさん、そして遊び相手をしてくれた蝶たち…。実はField、ある慶事があったにも関わらず、同時に淋しい出来事もあって、かなり複雑な心境であった。でも、すっかり皆さんに慰められた1日だった。これで北海道に戻っても、また頑張れる気がするよ。ありがとう…

 

戻る      2007年版目次へ      次へ