姫に会いたくて その2…春爛漫


ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 早春に咲く花のことを、スプリング・エフェメラルと言う。まあ、春の妖精とでも訳すのだろうか。しかし、この言葉は決して植物だけのことではなく、早春に飛ぶ昆虫もまたスプリング・エフェメラルと呼ばれている。もっとも、いくら早くから飛んでいるからと言ってもハチやアブをそう呼ぶ人は居ないから、結局は蝶に限定されると言って良いだろう。
 Fieldが狙っていたシーンとは、花と蝶の両スプリング・エフェメラルのコラボレーションなのだ。それも、単に花と蝶ではなく、沢山の花々の風景の中に蝶が居るという感じのシーンを撮りたかった。この思いは数年前から抱いていたのだが、前章でも書いたとおり、2年間お預け状態だった。だから今年こそ必ずと、心に決めていたことなのだ。
 とにかくむやみにアップにせずに、退いて撮ろうと思った。そして周辺の花を、少しでも多く写 し込むことを意識してみた。ならば広角レンズ…と思うのだが、広角レンズだと、蝶に思いきり近づく必要がある。しかし、花を踏みつけてまで蝶に近づくことは避けたいとのジレンマがあった。

 

 

ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 だとしたら、花の群落の周辺にやって来た蝶のみが対象となる。これだけ沢山の花が咲いているのに、蝶が群落の縁に止まる可能性なんて、いったいどれだけあるのだろう?
 とにかく、根気よく待つしかない。そして群落の周辺部分で蝶が止まりそうになったら、すかさず回り込んで近づく…ということを繰り返したのだが、これってものすごく疲れる!四方八方目を配り、もしやと思うととにかく走る。ハーハーゼーゼー!
 この写真も、まあ雰囲気は出てるのだが、何だろうなぁ、やっぱ花に止まってないとダメかな?

 

ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 こっちは、少し距離があったので望遠ズーム撮影。うーんどうせなら前ボケの花をもっとボカすんだったなぁ…

 

ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 ギャオ!惜しい!3枚シャッターを切ったのですが、花に止まっている時には、花の向こう側だったんですよ。で、最後に撮ったのが思いがけず飛翔シーンになってしまいましたが、なるべくピンを深くしたくて絞り込んでいた結果 、シャッタースピードがあまり上げられなかった!!これで、翅がピタッと止まっていれば、それはそれで面 白かったのですが…

 

ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 うわー、切り株が邪魔だよね〜。などとイマイチ写 真のオンパレード!吹く風に冷たさが加わって来て、うーん、また明日かなーと思い始めた頃撮ったのが次の写 真

 

ヒメギフチョウ(2007.04.29 北邦野草園

 良いシーンだったのだが少し奥で近付けない。仕方なく立木につかまり腕も体も思い切り延ばして、ノー・ファインダで7枚撮った写 真の内の一枚だ。モニタで確認したのだがシーンは悪くない。しかしピンが来てるかどうかあまり自信もなく引き揚げた。間もなく3時になるし、潮時だろう。
 撮影前から空いていたお腹に何か入れなければと、街へ向かい“蜂屋”でラーメンと餃子を注文した。また明日も…というつもりで、どこの道の駅で寝るか考えてみたが、旭川の道の駅は昨年で懲りていた。結局当麻に向かったのだが、そこの売店には日本酒が充実していたからである。“龍の里”と言う日本酒を1本仕入れた。“龍の里”とは当麻町のことを言うのだと説明された。地元の米で作った酒だと言う。酒造メーカーを確認したら高砂酒造だと返事が返ってきた。まああそこの酒なら良いだろう。

 車でちびちびやりながら、ノート・パソコンで写真整理をしたが、この写真は思いの外ピンは悪くなかった。満開の花々と林をバックに、新鮮なヒメギフがカタクリで吸蜜する姿は、冬の間中蝶屋が思い描いている、理想のシーンだと思う。それにしてもこの満開の花々!“春爛漫”とは正にこんな感じだろう思った。そして、ここ数年思い描いていたシーンが撮れたと、概ね満足できた。少なくてもFieldの腕と、安物の広角レンズでここまで撮れたら、明日一日頑張ってもこれ以上の写 真が撮れるという自信が無かった。ならば、ここでぐっすり眠ってから、夜駆けで帰ろう。そう決めて横になった。帰ったら走行距離は全部で600kmを超えるだろう。何だか思い切り疲れる一日だったが、今はとにかく深い眠りに付こう…皆さん、お休みなさ〜い、Zzzzzz......

 

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