裸足の水牛 

 台北市の主要な足はMRTと呼ばれる地下鉄網である。台北中心部からだと35〜40NTDだからおよそ100円〜150円程度で東西南北方向へ延びるそれぞれの終点駅まで行き着ける。しかも5分程度も待てば次の列車が来るので、とても便利だ。そんなMRTの南部の駅に新店という終着駅があるが、そのもっと先、安康というところへ侯新智さんが私を案内してくれた。そこには裸足で働き続ける水牛が居ると陳先生が教えてくれたのだが、果 たしてその正体は?


キシタアゲハ 黄裳鳳蝶 Troides aeacus(2006.4.3 安康)

 安康に到着すると侯さんは誰かを捜している様子。すぐに出会った年輩の男性を、“この人は弟だ”と紹介してくれたが、いったい誰の弟?裸足の水牛の弟さん?出会った人に尋ねたり大きな声で呼んだりしながら歩いて、ようやく目的の人に会えた。その人の本名は呂輝壁さんというのだが、自ら牛伯伯と称している。牛じいさんという意味か。
 話を総合すると、この呂さんは殺虫剤(農薬?)を取り扱い財を成すが、同業者が増えたことで手を引き、今度は鯉の養殖に手を染める。しかし、魚の病気が流行りこれも断念。その後私財を投げうって山を買い取り、弟さんと一緒に蝶の住める環境作りの為に日夜働いているということらしい。日本でも、一所懸命働く姿を牛馬に例えるが、牛伯伯の由来はその辺りにあるようだ。

 やっと台湾で蝶の写真が撮れる。挨拶もそこそこに勇んで歩き出したらすぐに呼び戻された。いったい何だろう?といぶかしがりながらも声のする方へ戻ると、呂さんが樹上を指さしている。その先では、何とキシタアゲハが産卵をしているではないか!かくして私の台湾での蝶の初ショットは、上に掲載の写 真となった。
※台湾にはコウトウキシタアゲハという近似種がいるが、私には明確に区別 が出来ていない。以下にご紹介する蝶も含めて、もし同定に疑問を持たれた方がいらっしゃれば、お知らせいただけると幸いです。

 

ルリモンアゲハ 瑠璃紋鳳蝶Papilio paris hermosanus(2006.4.3 安康)

 以下、撮影順ではなく科ごとにご紹介させて頂くことにしよう。
 最初にこの蝶を見たときには、なーんだカラスか…程度にしか考えていなかった。でも待てよ、ここは台湾だぞ…タイワンカラスなんてのも居たはず…等と考え直して注目していたら、後翅にブルーの強い輝きが見えた。途端にFieldは全力疾走!侮っちゃあいけない。ここは台湾なんだぞと認識させてくれた蝶です。 もっともこの蝶にもオオルリモンだ何だと近い種類がいるらしく、写 真に付けたタイトルに自信はない(汗)

 

ベニモンアゲハ 紅紋鳳蝶 Pachliopta aristolochiae(2006.4.3 安康)

 こいつは紛れもなくベニモンアゲハでしょう。何?オオベニモンってのも居るの?じゃあ、ワカラン!(大汗)
 その後、台湾のホームページを読めないなりに必死に調べてみたら、どうやらオオベニモンは尾状突起の先端にも赤い紋が現れるらしい。したがってこの2枚の写 真はベニモンでよろしいようです

 

タイワンモンシロチョウ 台灣紋白蝶Pieris canidia(2006.4.3 安康)

 やれやれ、 ようやくワカル蝶です(笑)ただ、翅を閉じてしまうと、モンシロチョウとどこが違うのさ!と言われそうなので、ワカル写 真をと心掛けて撮ったのがこの2枚。上の写真ももう少し角度が違えば良かったのですが、まあ向こう側の翅の縁にタイワンモンシロの特徴が透けて見えるので納得して下さい。
 このモンシロチョウとタイワンモンシロチョウについては、陳先生に少しお話を伺ったのですが、もともと台湾にはモンシロチョウは居なかったようで、いわば外来種。北海道におけるオオモンシロとモンシロの関係に似ていますが、台湾ではこの両種、今では住み分けが出来ているそうです。オオモンシロがモンシロを駆逐している状況とはやや違う気がします。

 

クロテンシロチョウ 黒點粉蝶 Leptosia nina niobe(2006.4.3 安康)

 肝心の“黒点”が写っていませんが、裏面でそれと判断できると思います。この蝶は沖縄で撮影出来ずにいたが、ここでは比較的楽に姿を見ることが出来た。例えばナミアゲハとかキタテハのように北海道では撮影が難しいが本州では簡単…みたいなもので、日本で撮影が難しい種類は台湾で撮っちゃえ!なんていう発想はズルイかなぁ?(笑)
 シロチョウ科は、ナミエシロやウラナミシロなど沢山見られるかと期待をしていたが、思いの外、目にした種類は少なく、ここに掲載した以外に見たのはツマベニとキチョウくらいなものだった。


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