オッパイ山(2003.06.22 上士幌町)

 朝3時の起床。これって実は、いつもなら就寝時刻。大雪山黒岳山頂に9時前に到着したい。そう思い立って逆算するとそうなってしまった。早めに酒を飲み、結局11時過ぎ就寝。一度目に目醒めたのは12時。何でだ?再び就寝し、次に目が醒めたのが1時30分。参ったなぁー。再び眠る。
 律儀な目覚まし時計が、容赦なく定刻に鳴ってくれたのは良いが、何だか寝た気がしないぞ!でも、自分で決めたこと。仕方なくもぞもぞと起きだし、山行きの準備をする。今日は十勝もその近隣も、予想気温27度の予報。下着・Tシャツ全てユニクロのドライタイプで用意した。これで完璧!
 コンビニで飲み物と、弁当を仕入れ、帯広市を出たのが4時過ぎ。世の中はもう明るい。上士幌を抜け糠平を過ぎたあたりで目にしたのがオッパイ山。東西クマネシリ山で、クモマベニヒカゲの聖地。昨年S氏が熊と出くわした山でもある。来月には私も熊と出会いに…そうじゃなくクモマベニヒカゲに会いに登る予定!

 

ルピナス(2003.06.22 三股)

 上士幌町では、このルピナスがやたらと目を惹いた。町で奨励でもしているのだろうか?実は私、このルピナスが大嫌いなのである。何だかエイリアンの如く、はびこっているという印象なのだ。同じ理由で、セイヨウタンポポを見ると、鳥肌が立つ。やはり、花は“ひっそり可憐”が 私の趣味に合う。
 しかし、朝露に濡れた草が白く光って、面白いコントラストだったのでシャッターを切ってみた。

 

エゾノハクサンイチゲ(2003.06.22 黒岳)

 層雲峡のロープウエイ駅に着いたのが6時過ぎ。駐車場で準備をする間もなく6時30分発の改札が始まるとのアナウンスが聞こえた。慌ててリュックを担ぎ、駅に飛び込んだ(それが、今日の敗因の一つ)
 慌ててチケットを求めロープウエイに乗り込む。定員100名程なのだが、20%程度の乗車率。しかも、どこかのサークルらしき団体さんが半分。残りは層雲峡温泉に宿泊した観光客で、登山目的ではなさそうな雰囲気!

 

黒岳山頂からの展望(2003.06.22

 登山道には、大きな雪渓が3つあり、しかも融けているところは川のような状態だった。昨年7月に登った時より遥かに体力は消耗した。
 しかし、ウコンウツギ・イワウメ・エゾタカネスミレ等雪解けを待ちわびるように開花していた。ところで…上の写 真のエゾノハクサンイチゲ。エゾとハクサンと地名がダブルで変な感じ。しかもイチゲって一輪咲くから一華(イチゲ)と記憶していたのに、何で複数の花が付いてるの?納得出来ません!!

 

アサヒヒョウモン(2003.06.22

 ところで…何故黒岳に登ったか?勿論蝶の写真撮影が目的なんですけれど、大雪には、ご存知のように天然記念物の高山蝶が4種類います。その内の一つがこのアサヒヒョウモン。他にウスバキチョウ・ダイセツタカネヒカゲそしてカラフトルリシジミですがカラフトルリは、発生がやや遅れます。ですから、3種類の蝶に期待をした訳です。
 昨年、この黒岳でアサヒヒョウモンと出会い感動のシャッターを切ったのですが今年はちゃんと翅の表も撮影させてくれました。

 

ウスバキチョウ(2003.06.22 黒岳)

 そして、今回の本命中の本命がこのウスバキチョウ。私が大雪の山に最初に登ったのが、今から15年程前だと思う。その度に“あーっ!飛んでる!!”大体7〜8割の確率でお目にはかかるのだが、ただ指をくわえて見ているだけ。未だにシャッターを切らせてくれなかった蝶なのだが、今回はようやくそのチャンスに恵まれた。
 登山道の両脇がロープで囲まれ、その巾1〜2メートル。その狭いエリアから撮影可能な距離に蝶がとまってくれる確率は、それほど低いものなのだ。今回、雪解けを待たずに、蝶の発生時期に合わせたこと、また好天にも恵まれて飛んでいる蝶の数も多く、しかも、ロープ際にイワウメが多く咲いている場所で粘ったことが功を奏した。
 実は“北海道の蝶”のホームページを主催していて、この北海道を代表する蝶が撮影できていないことに、後ろめたさのようなものを感じていたのだ。それはもうクリープのないコーヒーというより、コーヒーのないクリープに近い心境だったのだが、これでどうにか責任を果 たしたような気になれた。

 

ウスバキチョウ(2003.06.22 黒岳)

 折角ですので、もう少しこの特別天然記念物の姿を楽しんで頂きましょうか。ついでながら、特別 天然記念物とは、文化財保護法に基づいて文部大臣 により指定されるもので、天然記念物のうち特に世界的または国家的に貴重なものが選ばれ、保護の徹底が図 られているもので、イリオモテヤマネコ・トキ等に匹敵する蝶な訳です。

  お気付きの方もいらっしゃると思いますが、この写真、上の2点より黄色が濃いと思いませんか?ウスバキチョウは生まれたばかりの個体が濃い黄色で、日に日に色が褪せ、終いには翅が透明になってしまいます。
 9時〜11時まで、ウスバキチョウの姿を堪能したが、少し風が強くなって来た。飛ぶ蝶の数も減ったので、仕方なくポイントを離れ再び山頂に戻ってみると、そこには風で吹き上げられたウスバキチョウが岩陰で風を凌いでいた。

 

ダイセツタカネヒカゲ(2003.06.22 黒岳

 もう一種忘れちゃいけないのが、このダイセツタカネヒカゲ。昨年赤岳で辛うじて写 真撮影に成功したのだが、今回も姿を現してくれた。しかし、ウスバキチョウのように吸密活動は見られず、こうして岩の上にへばりついているばかり。

 

山頂の私(2003.06.22 黒岳

 3種類の天然記念物の写真撮影に成功し、満足している私の図。だと良いのですが、一通 り写真が撮れたので山頂に戻り、お昼も近いことなのでお弁当♪そう思ったのですが、無い!弁当が無い!思わずリュックを逆さにしてしまいましたよ。それでも無い物は無い!
 思い出して下さい。ロープウェイ駅に車を止めた途端に改札のアナウンスがあったことを…そう、慌てた私はお弁当を車の中に忘れてきてしまったのです。あーお腹がぁ〜“グーグルグル”従ってこれは、お腹を空かし途方にくれている私の図ということでした。

 そんなオマケもつきましたが、とりあえず満足して黒岳を後にした。帰途S氏の言うところの音更Hポイントに寄ってみた。すると長竿を持ったオジサンとお兄ちゃん達がリンゴを採っていた。神奈川からきたオジサンは、昨日この場所を教えて貰って20程採れたので、また来てみたとのこと。ついでに出会った京都のお兄ちゃんにもポイントを教えて一緒に採っているそうだ。3人で100以上は採った様子。
 エゾノウワミズザクラの伐採から激減し、私の見守る中、ようやく繋いだ命の糸にまた大鉈が振り下ろされた。断腸の思いで見ているしかなかった。この人達を止める権限を、私は持ち合わせていない。

エゾシロチョウ・ヤマキマダラヒカゲ・コヒオドシ(黒岳)

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