第16章 ルチアーノの生家(Italy2)
1.生まれ故郷 今日は5月5日だよね?もう日付と曜日の感覚が薄くなってしまった。昨夜遅くにママの家に着いた。ここで大きな勘違いをしていたことに気付く。ここにママは居なかった。15年前にルチアーノ・パパが亡くなり、ママは今、もっと都会に移り住んだとかで、この家は今、誰も住んでは居なかった。
ところが、庭の芝や花・樹木は手入が行き届き、建物の中も完璧に綺麗にされていた。不思議に思い尋ねると、ママが月に幾度かここを訪れ、メンテナンスしているのだそうだ。ハウス・キーパーとしての仕事を完璧にこなしているママ。いや、この家を愛し大切に思えばこそ出来ることだと感じた。そして室内にはルチアーノの若い頃の写 真、優しそうなお父さんの写真…ルチアーノはママ似なのだろう、でも優しさはお父さん似なのかもしれない。
玄関脇の大きな照明ボールが私の興味を引いた。それと雨樋。ちょっと分かり難いかも知れないが、ドラゴンの口から水が吐き出されるようにデザインされていた。この家の暖房は暖炉なのだろう。大きな薪小屋に薪が沢山貯蔵されていた。 小高い場所から、村全体を見渡す。全部で100戸もあるだろうか?それぞれ10人もは住んではいないだろうから、人口数百人の村なのだろう。今この村に、産業はない。従って仕事もない。だから、早朝から起きて車で1〜2時間かけ都会へ仕事に出かける。日中は車のエンジン音もあまり聞くことのない、ひっそりとした村だった。
村全体を見渡せる場所に、小さな教会があった。朝6時にこの教会の鐘が鳴る。村全体の目覚まし時計状態。朝、ルチアーノに“うるさかったろう?”と言われたが、私はそれにも気付かず爆睡していた。 |