胡蝶舞う国へ その11 台北動物園

ナガサキアゲハ♂(2007.09.17 台北市 動物園

 台風が発生したことは知っていた。台風11号が去った直後にFieldは台湾に来たのだが、すぐに12号が発生していた。しかし、天気予報は曇りということで、気にもしていなかった。朝食を終えて、ロビーに下りたが、空は案の定曇っていた。それでも、まあ何とかなるだろうと気にも止めずに外出した。
 昨日同様、景美で侯さんと待ち合わせをしていたが、珍しく侯さんは遅れているようだ。少し待っていると侯さんが現れた。“いつものお弁当屋さんが閉まっていたもので…” 侯さんはいつも私のお昼と飲み物、果物を用意して下さる。Fieldは蝶の撮影をする時に、水物は必ず持つが、食べ物を持ち歩く習慣はない。 お腹が空けば、帰りに適当な食堂に寄れば良い。いつもそんな感じだったのだが、侯さんの配慮には申し訳なくまた有り難く思う。

 

ナガサキアゲハ♂(2007.09.17 台北市 動物園

 実は今日、昨年台湾を訪れた虫林さんが行った翡翠ダムに連れて行ってもらうつもりでいた。ところが、バスを乗り継いでダムに着いた途端に空が泣き出した。侯さんがバス停近くのお店で傘を借りてくれ、周囲を少しうろついたが、雨が上がる気配がない。仕方なく台北の動物園に行くことになった。そこには昆虫館があるという。
 動物園のチケット売場で入場券を求め、おや?と思った。普通なら券にはミシン目が入っていて、入口で千切ってくれるだろう。ところが、その券にはミシン目が無い。いったいどうするんだろう。入口でそれを見せるだけ?それとも…。
 Filedには、このチケットをどうするのか少し興味があった。もしかして…と予測は出来ていたのだが…。入口でチケットを見せると、係の人がそれをスッと私の手から引き抜いた。そして、ビリビリビリとチケットの隅を破って返された。あはは、やっぱり!何とも大雑把と言うか大らかと言うか…。思わず笑ってしまった。

 

無尾鳳蝶 オナシアゲハ(2007.09.17 台北市 動物園

 雨足はかなり強くなっていた。順路図で確認して昆虫館に向かったが、この動物園は規模が大きく、Fieldが先日訪れた、日本が誇る旭山動物園を凌いでいた。しかも展示方法も凝っていて、大きな岩を組んで出来たような構造物で動物を囲ってあり自然さを演出していた。
 また水辺の動物は、手前にプールがあり、水中部分はガラス越しになっていて泳ぐ姿も観察することが出来た。例えば旭山のペンギン舎では、陸上の姿は手前から、泳ぐ姿は裏に回り込んで見るようになっていたが、ここのカワウソ舎は手前から両方の状態を観察できるように工夫されていた。
 昆虫館は右手奧の方にあった。当然それを作るに当たっては台湾の第一人者、陳先生に相談があり、当初は指導に当たっていたが、担当者があまりに言うことを聞いてくれないので、愛想を尽かしたのだとか…。昆虫館で最初に目にしたのはオナシアゲハだった。気温が低い為かそれとも羽化したてだったのか、とにかくじっとしていて動かなかった。うーん晴天の下で、オナシアゲハの飛ぶ姿を見たかったものだと思いながら撮影した。

 

枯葉(虫夾)蝶 コノハチョウ(2007.09.17 台北市 動物園

 コノハチョウは比較的活発に動いていた。日本産のコノハチョウとの決定的な差異は分からなかったが、台湾のコノハチョウは亜種名、ssp.formosanaとされ、台湾を意味するフォルモサの名が付けられている。(注:formosaはポルトガル語で“美しい”という意味で、16世紀にオランダ人が台湾を“美しい島”と称したことに由来し、今尚、欧米諸国でその名称が使用されている。)誰かが、台湾を“フォルモサ”と表現したら、すかさず“欧米か!”と言いましょう(笑)

 

緑斑鳳蝶 コモンタイマイ(2007.09.17 台北市 動物園

 こちらもじっと止まっていて見落とす所だった。しかも高所で撮影し難かったが、辛うじて撮った写 真である。開翅したらきっと美しい姿に息を呑むことだろうと想像しながら撮影したが、飛翔シーンは見ることが出来なかった。

 

黒點大白斑蝶 オオゴマダラ(2007.09.17 台北市 動物園

 おっオオゴマダラ!と簡単に思っていたが、台湾には2亜種生息していて、いずれも石垣産とは異なる種のようだ。この写 真は、ssp.clara で、石垣産によく似ていた。台湾にはもう1種、緑島黒點大白斑蝶 ssp.kwashotoensis が生息しこちらはやや小型で黒斑がよく発達しているということだが、生息地が台東緑島ということで、ここには居なかったと思う。

 

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