第6章 スイス・モントルーへ

1.Stazione Centrale(ミラノ中央駅)

 ホテルに戻る頃には、結構疲れていた。早朝から歩きっぱなしだから当然と云えば当然。普段はパソコンの前、移動も車の座席と座りっぱなしの生活に慣れている私には、ちとキツかった。それでも草原なら多少は自信があるが、石畳はいけません。結構足腰に来てましたね。
 ホテルで荷物を受け取りチップを渡し、外へ出たは良いけれど、さてどうしましょう?地下鉄?いや、やはり面 倒だ。でもタクシーは殆ど“TAXI” の看板のある場所に並んでいるだけで、意外と流してはいない。ところが幸運にもすぐに見つかった。女性ドライバーだったが、迷路のような、しかも路面 電車だトリムバスだとごちゃごちゃとした石畳を器用に走り抜ける。さすがだ!しかもガンバっていろいろと話しかけてくれて気分が良かった。更に降りる際に気付いたら彼女は何と蝶の模様のTシャツを着ていた。私は“ファルファッラ(蝶)が好きだから”と多目のチップを渡して降車。ん?単純!そうかも…


駅構内 古い建物に近代的なポスターが…不思議な光景だぁ!

 昨日のNord駅とは違って、この駅はデカイ!さすがCentraleだ。しかし、この建物も何かの古い建築物を再利用した物か、はたまた最初から駅として建てられた物かは知らないけれど、何で内部までこうコテコテに装飾されているのかワカラン!ついでに言うと、例えば日本なら“あ、デパートだ”とか“学校だ”とか殆ど外観で分かるじゃないですか。ところが、ここイタリアでは全くワカラン!駅さえ遠くからでは識別 できない。近くまで行って、ウィンドウ覗いてやっとそこが何屋さんなのか分かるといった調子。更に言うと自販機がない。公衆トイレもない。もちろんコンビニなんて全くない。逆にやたらと多いのがBar(バール)で早朝から大勢たむろしている。もっとも朝はパンとコーヒーくらいでさすがに酒飲んでる方は多くはない。コーヒー一杯でトイレ借りるのも手で、タバコもここで売っている。おっと話がどんどん脱線しましたね。
 脱線してもらっちゃ困るのがこちらなんですが、私が日本を離れる前に大きな脱線事故があり、多くの方々が犠牲になりました。ご冥福をお祈りします。


イタリア鉄道の国際列車 あっさりしたデザイン プラットホームがやたらと低い 

  日本で言う“緑の窓口” みたいなところでチケットを買い求めました。Montreuxの発音が正確に分かってなかったが、何とか通 じたようだ。ところが、38.6ユーロは安すぎないかぁ?とじっくりチケットを見たら、どうやら手に入れたのは乗車券だけのようだ。特急券と座席指定券も必要なんじゃないの?ちょうど日本人カップルがチケットを買ってたので、訪ねるとやはり必要だと仰る。再度並んで先程チケット売ってくれたおばさまにお願いしたら、必要ないと売ってくれない。心配になって駅の案内でも聞いてみたら、やはり必要だと言う。仕方なく違う窓口に並んで、もう一度お願いしたのだが、やはり必要ないという言い方をされた。いったいどうなってるんだぁ?うー、もうシラン!
 実はここまで来て、ふと気付くと愛用のサングラスのつるが根元から折れていた。仙台にも沖縄にも同行した奴で、分かれるには忍び難かったが、仕方ありません。丁度駅構内のお店で12ユーロ・ショップとでも言いましょうか、時計やアクセサリーや眼鏡等全てを12ユーロで販売しているお店があったのでこちらで代わりを買い求めましたよ。

 

2.列車で国境越え〜スイスで待っていたもの

 列車はVenezia発Milano経由Geneve行きで、Milanoの停車時間は30分もある。早々に乗り込んで適当に座っていたら、畏れていたことが早速起きましたね。見知らぬ おばさまが…と言っても、ここで顔見知りのおばさまが現れたら腰を抜かすことになる訳ですが…とにかく現れて、怪訝な顔でこちらを覗き込んでいます。ヤバッ!謝って席を立とうとしたら“何も問題はありません、どうぞそのまま”と仰って通 路を挟んで反対の席に座られた。ところが畏れていたことが更に続きます。今度はフランス語を話すお婆ちゃんが乗って来て、その彼女に何やら文句を言い始め。参ったねこりゃ!いよいよ席を立たなければと思いきや、またまた彼女に静止させられた。いや、隣の箱はガラガラでして、私が移動することには何の問題も無かったのですが、とりあえず座っていると、彼女は先程のお婆ちゃんと仲良く隣に座ってお話しを始めました。 何か不思議な人だなぁ。年齢は私くらいなもんでしょうか、金髪の歳のいったペコちゃんを想像してみて下さい。
 とにかく彼女はよく喋った。私にも、もちろんフランス語のおばあちゃん、後から乗って彼女の後ろの席に座った韓国人カップル、更にその後ろの黒人にまで声をかける始末で、どうもその度にジャッポネーゼが乗ってるとPRしてくれるものだから、すっかり有名人?になったみたいです。


湖にポツンポツンと村が浮かんでる?不思議な光景!

 ところで、Milanoを発って、間もなく客室乗務員がやって来てチケットとパスポートを提示したら、やはり特急料金を請求された。それに座席指定料金が含まれていたか、儲かったかは定かではありません。 そしてスイスに入ると、今度はまた違った服装の客室乗務員が現れて、パスポートの提示を求められた。国境越えはただそれだけのあっさりとしたものでした。
 その間にも、彼女のお話は止みません。彼女がファッション関係の仕事をしていてGeneveに在住していること、イタリアへは仕事で通 っていること、フィンランド出身で、日本人と同様に魚を生で食べる習慣があること等々。

 おかげで3時間の列車の旅は、全く退屈することなく終わろうとしてる。“貴女に会えて本当にラッキーだったと思う。ありがとう!”と別 れを告げ列車を降りた。ホームにはルチアーノとベレーナが満面の笑みで待っていてくれた。ルチアーノに私の新しい友達だと話し、列車の窓に向かって2人で手を振った。彼女も列車が走り去るまで手を振り続けてくれた。


通常の10本分のサイズ 注ぎやすいようにブランコに乗っている

 駅の外にはプジョーが停まっていた。ルチアーノは、お前のために用意した車だから自由に使っても良いぞと言いながら、彼の自宅まで運転してくれた。
 ルチアーノの家は駅から数分の小高い場所で、決して金持ち趣味ではなくこじんまりとした落ち着いた感じの建物だった。そしてテーブルの上にはドでかいワインボトルが待っていた。

 

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