第2話 沖縄の蝶

 沖縄に憧れを持っている蝶屋(我々蝶仲間ではそう呼び合っている)はたくさん居るだろうと思う。逆に北海道に憧れを持っている蝶屋もたくさん居ると思う。隣の芝生じゃないけれど、北にお住まいの方は、南に、南にお住まいの方は、北に憧れを持っているに違いない。そこで、それぞれの地域でどれほどの種類が棲息しているのか調べてみた。
  すると北海道の蝶は120種程度だから、日本の蝶を240種くらいと考えると約半分の種類が北海道で会える計算になる。ところが、沖縄県に棲息する蝶を数えて驚いた。何と70種程度。つまり日本に棲息する蝶の3分の1に満たないのである。これは勿論第1話で申し上げたとおり土着種の数である。何だかイメージとして沖縄に行けばたくさんの蝶に会えると思い込んでいる筆者にとって、拍子抜けの感がある数字である。
 さらに、生息数の内訳を吟味してみた。北海道じゃなければ会えない蝶。つまり北海道の特産種は何種類なのか? また逆に沖縄の特産種は何種類なのか、数えてみたら、またまた驚いた結果が出た。 北海道に来ないと出会えない蝶、たったの16種。対して沖縄でないと出会えない蝶、何と40種類なのである。

 つまり、北海道に棲息している蝶の86%は北海道じゃなくても会える訳で、一方沖縄に棲息している蝶の60%近くは沖縄でしか会えないのである。
 北海道に意外と特産種が少ない要因としては、北方系の、高い気温で生息が難しい種類は、もちろん北海道では生息可能なわけですが、本州では標高の高い場所で(要するに天然クーラーを利用して)生息が可能(このような分布のしかたを垂直分布といいます)だということが考えられる。
  一方沖縄に特産種が多いのは、南方系の気温が高くなければ生息できない蝶は、天然ヒーターに該当するものが無い限り、本州での生息は不可能な訳で、結局沖縄にしか生息できない。加えて沖縄は小さな隔離された島という条件のもとに、沖縄の特定の島にしか生息しない固有種を育んできた。更に沖縄に生息する蝶の種類が意外と少ないのは、標高の高い山がなく、本州の平地にに生息する蝶が沖縄の高山帯にということにはならない。等が考えられる。
 蝶屋にとって、北海道の魅力は、数はさほど多くはないけれど北方系の特産種が生息している。本州では標高の高い(会いに行くのが容易でない)場所にいる蝶に、平地で会える。 生息する種類が多い。 ということになります。
 また沖縄は、やはり魅力的な固有種と、本州以北がオフシーズンでも蝶に会えるというところでしょうか。
 かくして、北海道在住の私の沖縄通いは、当面止みそうにないのである。(何か私の言い訳を書いてるような…)

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