番外編

アサギマダラ2013

鱗翅目 マダラチョウ科 アサギマダラ (開翅長90mm〜100mm)

 
 関東以北では土着種ではなく、越冬は不可能と思われるが、毎年気温が上昇してくる時期になると生息域を拡大し、時に十勝地方でも姿を目撃されるが、5〜10年に一度…というペースである。
 この蝶は移動性が非常に強く、渡り蝶という異名を持つ。アサギの名の由来は、翅に浅葱(あさぎ)色の半透明な鱗粉を持たない部分があることから付いた名だが、ここにフェルトペンでマーキングをし、この蝶の移動経路を調査する活動がある。

過去の目撃例

 

2004年9月4日 中札内村で目撃し撮影も出来た。実はこの年6月にも、同所でメスを目撃していることから、この写 真の個体はその時の子孫ではないかと推測している。

 

2013年の状況

 

 2013年6月 北海道新聞にこの記事が掲載された。そして対馬教諭の名前。私も存じ上げている方だが、それより何より私の蝶仲間、S氏が対馬氏の教え子なのだ。さっそくS氏に電話をしたら当然の如く彼は承知していた。
 そこで、アサギが上ノ国に来てるなら、 十勝にも来てるかもよ…と彼をそそのかしたのが、2013年6月9日。そして本当に見つけてしまった。しかし、見たというだけ。
救いはS氏と私の2名が見た(証言者が居る)ということだけ。

 
 さらに6月22日、再調査の結果、ふたたびアサギマダラ発見。辛うじて写真は撮ったが、逃げられそうになり、S氏にネットで捕獲してもらい…

 S氏の標本箱に並べても良いぞと言ったのですが、結局翌日マーキングして放蝶した。
 この件で色々とS氏とも意見交換をしたが、まず、6/9のアサギマダラとこの蝶が同一かどうか?という点では、 発見場所が地図上の直線距離で数km離れていることから、別個体と考えた方が自然ではないかと結論づけた。であるなら、最初の発見個体は雌雄確認は出来ていないが、放蝶した個体は雄であった。しかし、更なる個体が十勝に入って来ていることも考えられ、もしその中に雌が居れば、産卵し子孫が発生することも考えられる。ということで意見が一致。
 そこで S氏と可能な限りアサギマダラの食草であるガガイモ科のイケマを探し幼虫の発見につとめようと試みたが発見することが出来なかった。


8月後半になり、もし6月にアサギマダラが産卵していたら、間もなく成虫になり十勝の空を飛ぶことも考えられるので、調査に行きたくて仕方なかったが、週末毎の雨で調査も出来ずに諦めムードが漂い始めていた。

 

 2013年9月21日 3連休初日であり、予想気温25度近い。最後のチャンスと覚悟して出掛けるが、吸蜜植物はことごとく枯れ、タンポポさえ既に花がない。諦めて林道から出ようとした直前、奇跡的にアサギマダラを発見。しかも、ご覧の通 り、汚れもスレもない翅で、どこか遠くからやって来た個体ではなく、地元十勝で生まれ育った個体だと推測される。

 6月22日発見したアサギマダラはどこから来たのだろう?北海道新聞のように九州からだとしても、そこで捕まり放蝶されたというだけで、更にもっと南で生まれ九州の姫島を経由しただけかも知れない。実際台湾生まれのアサギマダラが九州で見つかっている。もしかしたら、あの時見たアサギマダラは台湾生まれであったのかも知れないのだ。
 そして今日出会ったアサギマダラは、北海道に居続ければ冬を超せる手だてが無く、これから温かい土地へ南下するのであろうか?

 彼等の生態は、未だ分からぬことばかりだが、我々の想像を超えたことをやってのけてくれていることは間違いなさそうだ。