これぞ超ビギナーズ・ラック!

 蝶が唯一の趣味だった頃、山へ出掛け野営したものの、雨にでも降られると、何も出来ずにすごすごと帰途についた。また、お天気が良くても夕方と早朝は、何もすることがなく、手持ちぶさただった。そんなこぼし話を友人のS氏にしたら「いつも、どこへ行ってるのさ?」と聞くから「トムラウシとか、幌満とか、糠平とか…」と答えると。「それって、全部釣り場だよ。釣りをやれば良いしょ。」しかも釣りは朝方と夕方が良いという。蝶とは昼間ゆっくりと遊べる訳だフムフム……

 そんな会話があって、1984年の夏 DIYのお店で、振り出しの1,000円の竿、これまた1,000円程のリール、5個で500円のスピナーセット、300円位 の2号ラインを購入し、トムラウシ(新得町)へ家族と、そして友人のN氏と出掛けた。土曜の午後出発だったが、早々に目的地に着き、手頃な場所にテントを張った。しかし、焼き肉&ビールにはまだ日が高い。

 早速用意したタックルをセットしたが、ラインの結び方も分からずに苦労した。やっと準備が完了して、スピナーを投げてみたが、上流へ投げる?それとも下流?スピナーをひく早さは?とにかくコイツが回転しなきゃ意味がないのだろうと、上流に投げたときは早く巻く。下流の時は遅くても良いのかも…等と試しているうちに周囲が薄暗くなってきた。

 そろそろ止めようかと思った時に、かなりの流速の中に時折波紋が見える!こいつは何か居るのかも…と川上に立ち、川下にスピナーをキャストして、先程の波紋の上を通 過するようにコントロールしながら、ゆっくりゆっくり巻いてみた。 ググッと竿に重みを感じた途端に、そいつは川面 を割って大きくジャンプした。心臓がドクッっと高鳴った。“何だ今のは!?”思った途端に、2度3度とジャンプされ、リールのスプールが悲鳴を上げながら逆回転する。竿を立ててホールドするのがやっとだった。 ジャンプがおさまるのを見計らって、リールを巻いてみると、今度はイルカの曲芸ののようなテイルウォークで、川面 を縦横無尽に走り回る。リールがまたまた悲鳴を上げ、先程巻いた以上にラインが出ていった。

 いったいどれ程の時間が過ぎたのか、魚が弱ってきたのに気付いたが、今度はどうやってこいつを引き揚げたら良いのか見当がつかない。その時ふと、キャンプ道具を入れて運んだコンテナの事を思い出した。“コンテナ持ってきてくれ!”そいつを沈めて、魚を慎重に誘導した。“やったぁー!”“写 真写真!”もうその時にはストロボが必要なくらいの暗闇になっていた。そして、そいつは下に敷くフキの葉っぱが3枚必要なほどでかかった。その夜のビールの味が格別 だった事は言うまでもないだろう。

 あの夢よもう一度!かくして、私の釣り人生が始まってしまったのだ。

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