〜シロウトがシロウトに教える写真術〜
デジタル写真のススメ

とりあえずは以下の写真を比較してみて欲しい。

処理方法

使用カメラ/Minolta α7xi
レンズ/Minolta100-300マクロズーム
使用フィルム/フジISO400Ace
銀塩写真をプリント後
Linotype-Hell社のSAPHIAというプロ用のスキャナでスキャン

 

処理方法

使用カメラ/Minolta Dimage7
レンズ/28-200mm
500万画素、ハイクオリティjpg保存

 

 

 上が従来の銀塩写真。下がデジカメで撮影した写 真であるが、どちらも、まあまあピンは合ってそうで、どちらがどうということもなさそうである。ただ、処理方法を比べると、フィルムが要らない、プリントも必要ない、もちろんスキャンも必要ないということで、デジカメの方が手間が要らないということが解ると思う。では下の写 真はどうだろうか。

 

 上の写真を3倍程に拡大してみたものである。左は思いの外ピンが合ってなかった・もしくは拡大した分ボケたとの印象。逆に右は先程気付かなかった蝶の口吻、体毛、後翅尾状突起近辺の鱗粉の様子まで見えてきた。
 何故このような差が出るのか?
 一つは銀塩写真が、フィルム・印画紙を通すことで、拡大したときにそれぞれの粒子が出てきてしまうのに対し、デジカメはかなりアンダーで写 したときにノイズが発生するものの、それ以外では余計な粒子が邪魔をすることがないからだと思う。
 
もう一つが重要な要素であるが、皆さんは被写 界深度という言葉をご存知だろうか?
 例えば、カメラのピントを2mに合わせる、ある条件では1m80cm〜2m30cmまでピントが合うかも知れない、しかしある条件では1m95cm〜2m10cmに合うかも知れない。このピントの合う深さを被写 界深度というのである。
 そして、この被写界深度は、一般的にデジカメの方が深いのである。では何故デジカメの被写 界深度が深いのか?
 デジカメのレンズの焦点距離を云うとき「200mm相当」という言い方を聞いたことが有ると思う。これは受光部分のCCDが35mmフィルムより小さいことに起因する。通 常CCDは例えば1/1.7というように表示されている。つまりフィルムより通常小さいのである。1/1つまり等倍にならない限りこの“相当”は取れないのである。結論を云うと200mm相当はCCDサイズ1/1.7を元に計算すると200mm÷1.7=117.65mmということになる。通 常焦点距離が短い方が被写界深度は深い。従って“デジカメの200mm相当”は“銀塩カメラの200mm”レンズより被写 界深度が深いのであると私は解釈している。
 この現象は、より広角レンズを必要としている方には有り難くないかも知れない。しかし、私のように接写 ・マクロ撮影を中心にしている人間にとって、実に有り難いお話なのである。

 ここでちょっと気になるのが、では写真の醍醐味とも言えるあのボケ味は、デジカメでは表現がムリなのか?
次を見てもらいたい。

 

 どとらもデジカメ写真で、左はシャッタースピード1/90 F9.5 右はシャッタースピード1/750 F3.4で撮影した。開放でピンが浅く、絞り込めばピンが深くなるという、銀塩カメラでの理屈はデジカメでも充分生きているのである。

デジカメをお勧めする訳
 デジカメの画素数は、日進月歩の歩みでその数を着実に増やし、400万画素クラスは、もう珍しくないという時代になった。私の思うには、デジカメが銀塩写 真を超える、その限界点は1,000万画素と考えている。市販のデジカメが400万〜500万画素となり、プロ用機が600万〜1200万画素となった今日。デジカメじゃぁねーという声を気にすることはもう無くなったと思う。そして、私のようなマクロ・接写 を中心にした人間にとってはもはやデジカメの方がかえって有利な状況になってきている。何より、私のようにHPへの利用をお考えの方には、完全にデジカメ有利の時代である。
 更に、デジカメはフィルムを使わないので、コストを考える必要がない。プロが50枚撮るなら、シロウトの私たちは100枚撮ろうではないか。プロの方が沢山シャッターを切っているのに、シロウトが数枚しかシャッターを切らないとすれば、プロに迫れる訳もない。私はデジカメを手に入れてからメチャメチャたくさんシャッターを切るようになった。下手な鉄砲も……なのである。半日の山歩きで100枚以上はシャッターを切っている。アングルを変え、絞りを変え、露出補正を何種類も変え、そうすることでカメラを完全に“自分の道具”にしたいと思う。

デジカメ選びの為のスペックの見方
画素数:大きいにこしたことは有りませんが、データを写真屋さんでキャビネ版にプリントに焼いてもらう、カラープリンタでA4くらいで出力する。HPに使うなど、一般 的な使い方なら、200万画素もあれば充分。ただ画素数が大きければ、トリミングが出来るという利点があります。(必要な部分だけ切り取っても、さほど画質が落ちない)
CCD:1/0.0という表示がされてますが、この0.0の数字が小さい方が高性能です。例えば1/2.7より1/1.8の方が性能が良いことになります。これはCCD(受光部分)の大きさを示しています。分数で書かれてますので、分母が小さい方がサイズが大きいことになり、写 せる精度も高いことになります。
レンズ:レンズの口径が見た目大きい方が良い。性能の良いレンズはやはり大きくなります。 焦点距離:34〜102mmとかという表示です。狭い室内を撮りたい、風景写真を撮りたいという方は、前の数字の小さいものを選びます。私のように小さなものをクローズアップで撮りたい人は後の数字の大きなものを選びます。
1眼レフ・2眼レフ:レンズから入った光り(映像)をそのまま見せてくれるのが1眼レフ、別 の小窓から見るものを2眼レフと言います。1眼レフは見たままが撮れますが、2眼レフでは見えた画像と、撮れる画像にギャップが生じます。特に近撮になればなるほど顕著です。撮りたいものをセンターにしたかったのに、どちらかに寄ってしまった。またひどいときには撮りたい物で無いところにピンが合ってしまった。なんてことも起こります。お勧めは1眼レフですね。
あとはお好みで、夜景モードがあるとか、マクロモードがあるとかという話になります。

よりレベルの高い写真を求めて
 私の思う質の良い写真の条件は“白飛びしてない、黒つぶれしてない”写真ということだと思う。例えば白い花の写 真が、花びらの白い中にも、微かな筋・陰などを表現していること。逆に黒い犬でも真っ黒な塊ではなく、その毛並みを表現していることということになります。これを実現するにはどうしても露出補正をしなければなりません。簡単に言いますと、白いバックで黒い物体を撮影するにはプラスの補正。黒いバックで白い物を撮影するにはマイナスの補正が必要ということになります。
 もっとも、ドラマティックな効果を狙ったローキー(黒っぽい)写真。清潔感・ソフトムードを狙ったハイキー(白っぽい)写 真はそれを否定するものではありません。
 露出補正の詳細な方法は、それぞれのカメラのマニュアルでご研究下さい。

 
左は適度に補正が効いているが、右は白飛びしている例。

より芸術性の高い写真を求めて
 私が蝶の写真を撮り始めたのは、今からかれこれ30年以上も前になる。カメラで蝶を撮り始めてから近年まで、蝶を画面 の中央に、しかも出来るだけ大きく写すことに情熱を傾けてきたように思う。
 昨年、イタリア人写真家Luciano Lepre氏と、写真について討論する機会に恵まれた。彼曰く“1/3の定理を知ってるか?”1/3の定理とは、水平線とか地平線等画面 を大きく区切るようなラインを画像の1/3または2/3の位置に配置すると、画像として安定して見えるという定理で、写 真・絵画をたしなむ者にとっては、常識といって言い理論である。私も当然知識としては持っていた。
 しかし、“私は芸術を求めてはいない。カタログ・商品撮影をしているのだ”ということを主張した。そのとき彼が撮って見せてくれた写 真が下の写真である。(三脚なしで撮ったので、彼には不満の様子だったが…)

 この写真を見ていて、私は何か物語りを感じた。私のかつて撮っていた商品写 真とは明らかに何かが違う!
オオアオゾウムシの位置、草の葉の位置、草に付いた露。彼はこの虫が歩いてこの位 置に来るまでシャッターチャンスを窺っていたに違いない。演出が効いた、しかも、ここでシャッターを切るんだという明確な意図を持った写 真だと思う。
 私は、対象物を撮ることだけに集中しすぎて、周りのことを無視していた。スタジオでバックを用意して撮るのでなければ、そこには必ず同時に写 り込む背景がある。私はその背景とのバランスを考えてシャッターを押してなかったことに気付いた。

撮影のヒント
 その1 対象物をセンターから外してみる。


この蝶を撮るんだという意識が強すぎると、どうしてもこういう写真になってしまう。


しかし、もう少し余裕を持って蝶の周りを見ることが出来れば、
写真がますます面白くなってくる。
上と下、皆さんはどちらがお好きでしょうか?

 その2 例えば花にとまる蝶、“花と蝶”両方で1つの物体として捉える。


最近の私は、蝶の写真を撮るのではなく、蝶の生態写真を撮るという考えが強くなって来た。
そうなると、蝶を取り巻く環境全てが重要に思えてくる。

 その3 「シンメトリーはセンターでokだ」Lucianoが言った。


シンメトリー(左右対称物)を撮るときには画面を大きく区切る線、この場合中央の枝が
センターにきたほうが面白い写真になると彼は言いたかったようだ。
上記写真は私の撮影です。(緑小さんありがとう!…一部の人にだけ解るハナシ)

その4 1/3の定理
 ここで先程出てきた1/3の定理の具体例を見ていただきたい。

 デジカメのオートフォーカスで難しいのが、空のような一様な広がりを持つシーンのピン合わせなのだが、こうして、山並みとか地平線をセンターにするとピンが合い易い。しかし、そのままシャッターを切ったのでは、構図としては面 白くない。

 そこで、シャッターを半押しにしたまま、カメラの角度をを若干上に上げてシャッターを押し込んだ。こうすることによって、撮影者が何を撮りたかったのか(空か、地面 か)明確になり、そして構図も落ち着いて見えるようになる。つまり画面を縦・横3等分する線をイメージして、画面 を大きく区切る線(この場合は地平線)をその等分したラインに合わせることにより、構図的に安定した印象を与えるものである。なぜ1/3なのかは、人間の一般 心理であり、理屈で説明できない点を理解していただきたい。先のルチアーノの写 真は、草の位置(縦ライン)。そしてピンの合っている所と、合っていないところ(横ライン)が、それぞれ縦横の1/3想定ラインとほぼ一致することで、安定した構図となっている。

その5 お手持ちのカメラの最高解像度で撮影し、JPG圧縮を強くかけない。
     圧縮率の高い写真と、圧縮をほとんど掛けない写真。パソに取り込んで拡大比較してみて下さい。
     いかに多くの情報が失われているか、お分かりになるはずです。
     
パソに取り込んでから重要でない物については再圧縮して保存すればよいと思います。
     沢山撮れるからとむやみに圧縮しないように

その6 予備の電池は、くれぐれも忘れずに!(これぞ基本のキの中の基本のキ)
     格言/冷蔵庫、電気無ければ、ただの箱。デジカメは箱(物入れ)にもなりません。

 なーんてことで、まだまだ書きたいことは山ほどあれど、あくまで我流の私なりの解釈によるデジカメ講座でした。
対象が蝶でなくても、何か得られるものがあるのでは…と思っています。
良い写真が撮れたと思ったら、どうぞFieldのBBSへ、ハリコ宜しく!!